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zoom RSS 嗚呼・・・ウエディング・ベル

<<   作成日時 : 2007/02/04 20:00   >>

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数日後、真奈美が菓子箱を持って夏美を訪ねて来た。

「先日はゴメンなさい。 これお茶のときにでも皆さんで召し上がって…」
有名なケーキ店のロゴいりの箱を夏美に手渡した。

「まあ そんな…仕事ですから…」
暗に断ろうとしたのだが
「受け取ってください。 じゃないとこの次から我が儘言えなくなっちゃうから。」
と明るく言われてしまい、どうしようかと考えているところへ上司の佐久間が来た。

二人のやり取りを聞いていたとみえて
「西田くん ご好意だから。」 と言って「ありがとうございます。」と礼を言っている。
夏美も慌てて、遅れて礼を言い頭を下げた。


「美容室のエステに来たの。」
そう言ってから
「時間が速過ぎたの。西田さんちょっと宜しい?」

真奈美は夏美の姉の友人だった。
と、いっても片やお譲さま、姉は思い切り庶民の娘。
どこで繋がったのか不思議だったが、姉によると大学で同じゼミだったという。
「ちょっと世間からズレてるけどね。まあお譲さまだから。」
そう言って姉は笑っていた。

「夏美ちゃん 結婚の予定は?」
突然真奈美に言われ、夏美はコーヒーをこぼしそうになった。
二人になると真奈美は『夏美ちゃん』という。
「全然。…だって恋人すらいないもの。」
返事の最後の方は小声になる。
ゆったりとした笑顔で
「いいなあ…」 という。

これから結婚するのに、しかもあんなに素敵な婚約者なのに、恋人がいない私に『いいなあ』…??
「いいことなんてないですよ。
真奈美さんみたいにあんなに素敵な婚約者 探そうとしても無理ですもの。」
「素敵な婚約者か…」
さみしそうな顔で夏美を見てから、カップを手のひらで包むようにして
「私、あの人から愛されているのか解らなくて…ただ『高野の娘』というだけで婚約したんじゃないかと…」
と訴えた。

「まさか そんなことある訳ないですよ。」
思わず大きい声で言ってしまい、苦笑しながら
「もしかしてマリッジブルーですか?」 と訊いた。

微かに笑いながら ううんと首を振る。

「あの人、好きな女性がいたんだけど事故で亡くなったの。
とても綺麗で、優しくて…私の憧れの人だったの。」
真奈美が腰掛で親戚の会社に勤めていたとき、その女性は先輩だった。
二人は社内で有名なカップルだったと言う。
そして女性だけでなく、その相手の男性もいつしか真奈美の憧れの対象になったらしい。

事故からしばらくして、真奈美が伯母に騙されてホテルのワインパーティに行ったとき、見合いだと聞かされ相手は偶然にもその彼だった。

「彼女に気の毒だと思いながら、心の奥底では嬉しくて…
舞い上がっていたわ。」

夏美は、何も返事が出来ずにいた。

真奈美の気持ちが解るような気がした。

憧れが愛しさに変わる。

それと同時に亡くなった彼女への申し訳ないような気持ちも浮かんでくる。

知らない仲だったら、悩むことはなかったのに…

「高野さま ご予約のお時間ですが。」
美容室の係りが迎えに来て、
「佳恵ちゃんによろしくね。」 そう姉への伝言をして真奈美は行った。


事務所でパソコンに向かいながら、夏美はぼーっと考え事をしていた。

−私にはどうにもできない事・・・−
そう思っていても、何故か真奈美の悲しげな顔が脳裏から離れずにいた。

「おい 西田夏美どれにするんだ。」
杉浦の大声にはっとして、振り向くと真奈美から貰ったケーキをそれぞれ取り合っていた。

「一番おいしそうなのがいい。」
「お前、一番ってなあ・・・」と笑い
「早くしないと取っちまうぞ。」と言っている。

佐久間が
「西田さんのご苦労に対するケーキだから、一番はやっぱり西田さんだろう。」
と、手を伸ばした杉浦を睨む。

「じゃ 頂きます。」

食べ終わるのを待っていたように佐久間が訊いてきた。
「高野さま どうかしたのか?」
仕事は厳しいが、部下には優しい上司が心配して訊いてきた。

ブライダルは華やかさもあるが、その陰で細やかな神経を使わなくてはいけないことを要求される。
他人同士が婚礼という場を介して、一生の付き合いをしていくのだから、中々に難しいものがある。
慣例やしきたりなど互いの主張が衝突することが多い。
スムーズにいくのは稀なのだった。

何か婚礼の次第や準備に、不満や不安があるのかと気を廻しトラブルが起こる前に・・・と心配するのは、長年この仕事に従事している佐久間の職業病かもしれない。

「ちょっとブルーになっているみたいようです。」
話の内容をそのまま伝えるわけにはいかない。

「そう。 女の人は大変だな…」
相手を間違えると、それだけでも不幸になることもある。 と言って
「西田くんも、数いる相手の中からよーく見極めてからにしたほうがいいぞ。」 とからかう。

「あの…ですね。数いるもなにも、一人もいません。」
意外そうな顔をして 「一人もいない?」
夏美をダシに佐久間や杉浦が男選びの話をしている。
その様子を見て
「男って子供みたいね。」 小声でいう女子社員に夏美は頷いた。



「祐一さん・・・祐一さんの望む家庭ってどういうものですか?」
食事に誘われた真奈美は結婚相手の祐一に、意を決して訊いてみた。

「うん?」 何故そのようなことを訊くのかと言いたげな顔を少し傾げて
「突然 どうしたの?」 と訊く。

「・・・祐一さんは私じゃなくても、…他にもっと素敵なお相手がいたんじゃないかと思って。
私は…それほど取柄があるわけじゃないし、美人でもないし…」
真奈美が真っ直ぐに向いて言うと、祐一が声を出さずに笑った。

「何を言うかと思ったら。
・・・私は、笑いたいときに笑えて、泣きたいときに泣けて、嬉しいことは二人で喜べて、悲しいときは慰めあえる、そんな普通の家庭がいい。」
ときっぱり言ってから
「キミとなら出来ると思ったんだよ。
…あの葬儀のとき、泣いていたよね。ずっと泣いていた。
あの泣き顔は泣けない私の代わりに泣いているんじゃないかと…あの時の自分の悲しみを半分拾ってくれるんじゃないかと、混乱しているのに、頭のどこかが醒めていて、勝手に思ったんだ。」

祐一の言葉が続いた。

「偶然 見合いでキミに会えて嬉しかったよ。
お互い騙されてホテルに行ったんだよね。
顔を合わせたら驚いたあとでにっこり笑った顔に惚れたんだよ。」

「えっ?  顔が…何ですか?」
「いや 何でもない。」
テレて慌てて言う祐一に
「私…私の一方的な想いだけなのかと思って…」

はにかむ真奈美に
「相思相愛だな。」 と片目をつぶってみせた。




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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
きゃーーーノロケだわぁ。
「相思相愛だな」なんてどんな顔していたんでしょ?
この方のモデルは誰?なんて考えながら楽しく読ませてもらってまーす!
はな
2007/02/05 11:50
*はなさんへ
むふふっ*^^*
この彼はちょっと渋めにきめて欲しい沢村一樹さん。(エロエロじゃないときよ!笑)
これから、もう少しいろんな人が出てきます。
待っててね♪
はる
2007/02/08 10:02

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