ひまわり 16

梢が浩志と会ったのは吉川に打ち明けてから2日ほど経ってからだった。

「どうして別れなきゃ駄目なんだ? 理由を言わずにただ『別れて』じゃ納得できない。」
自分から絵美のことは言い出さない。
「ごめんなさい どうしても言えないの。 だけど今のままじゃ…もう…嫌なの…」
「何が嫌なんだ?」
「・・・・・・」 
何度聞いてもそれ以上のことを言おうとしない梢に
「別れないよ。」 そう言うと立ち上がり店を出て行った。

一人残りぼんやり外を見ていた。
浩志の前では泣かないと決めていたが光るネオンが次第にぼやけてくる 頬に流れる涙を拭いてコーヒーを飲み干した。
・・・負けない 浩志の気持ちに負けない 負けたら…あの人の胸に飛び込めない 待ってくれると言ったあの人の・・・

浩志は歩きながら梢の別れ話を思い出していた。
何も言わずに別れたい 何故?
絵美のことを知られ 責められたら浩志に返す言葉は 無い…でもその事は言わずにただ別れてと言う。
吉川か? 梢が営業に移動になったときに感じた焦りを思い出す。
最初に吉川に会ったときは何とも感じていなかった。
しかし 何度も吉川の敏腕さを魅せ付けられていくと 自分の頑張りが至らないものに感じられ…焦れていた。
そこへ梢の移動…吉川のそばにいて仕事ぶりを見て浩志と比較されたら…
自信が揺らいでいた その反動で吉川に『恋人だから』と告げてしまった。
「別れて欲しいの」 真直ぐ目を見て言われた 真剣な表情で…もう駄目なのか?
だけど別れることは…出来ない。時間が経ったら元に戻れるかもしれない 待つんだこのまま…
絵美に別れを言おう。一度は別れたんだ 別れられる…

梢はマンションに帰りペタンと座りこんだ。
携帯が鳴った 吉川からだった。
「何をしていたの?」
「…相田さんに会ってきました。」
「そう… 話し出来たのかい?」
「うん…別れないって…」 押さえ切れず嗚咽が洩れた。
吉川は泣いている梢が目に浮かび我慢出来なくなって
「今 行くから。」 そう言うと電話を切り梢のマンションまで車を走らせた。

「アイスクリーム買ってきた 好きだよね チョコの。」
「……」
食べよう と言ってカップの蓋を取り梢に渡した。
浩志と会ったときの話は聞かない…聞けば泣かせてしまう 泣き顔は…見たくない。
「美味い?」 と聞いてみる。
微かに笑って頷く梢が
「おいしい…そういえばご飯食べてない…(笑)」
「えっ あ じゃあご飯食べに行く?」
「吉川さん食べたんですか?」
「カップラーメン」
「うそ…吉川さんがカップラーメンなんて 似合わない…ふふっ」
外に出掛けていかなくても 冷蔵庫に何か有るからと立ち上がりキッチンに行く。
ちょっとの時間で炒飯とサラダを作って二人で食べた。
「どうやったら すぐ出来るか不思議だよ 料理だけは…」
「吉川さんにも苦手なもの有ったんですね。」 
「一杯あるよ 苦手なもの…」 今一番の苦手は梢の泣き顔だ・・・
他愛ない話しをすることで梢の気持ちも落ち着いたようだった。

吉川は 一度自分が浩志に話しをしたほうがいいかとも思ったが、余計拗れたら…そう思うと大人しくしていることが最善策だと…自分に言いきかせた。


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